[PR] 肝炎 忍者大好きいななさむ書房: 世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶 (ナショナルジオグラフィック・ディレクションズ)

2009年06月21日

世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶 (ナショナルジオグラフィック・ディレクションズ)





世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶 (ナショナルジオグラフィック・ディレクションズ)
ドルフマン(スペイン語読みで)は、ウォルト・ディズニー作品に潜む米国文化帝国主義を容赦なく暴いた批評の名著『ドナルドダックを読む』も手がけている非常に多彩な才能をもつ作家である。アルゼンチン生まれでチリ国籍。

本書は、ナショナル・ジオグラフィック協会による紀行文学シリーズの1冊という位置づけで、地球で最も乾いた砂漠アタカマ紀行という体裁ではある。しかし、読み進めるほどにみえてくるのは、現代チリが拭い去れずに現在もなお呻吟し続けるどす黒い暴力の裏面史であろう。

この旅にはいくつかの目的がある。多くの謎に満ちたクロアチア系の妻の家系を探ること。かつて50年間チリにその全歳入の半分以上を供給しつづけた硝石産業の足跡をたどること。そして真の目的が、無二の親友フレディ・タベルナの行方を追うことである。

1970年に、世界で初めて民主主義的選挙で選ばれたサルバドール・アジェンデ左派政権が発足した。若きドルマンとフレディ・タベルナはともに学友でアジェンデ・シンパであった。しかし73年、米国CIAに後押しされた軍人アウグスト・ピノチェト率いる軍事クーデタによりアジェンデ大統領が死に、政権は崩壊する。以降、ピノチェト派は大規模かつ徹底的な反体制派の弾圧に乗りだし、多くのデサパレシードス(行方不明者)を生みだすことになる。

極貧から身を起こし、アジェンデ派の北部リーダーに登りつめたフレディは、そのカリズマ性ゆえに軍部に睨まれて捕らえられ、銃殺されるにいたった。ドルフマンはその銃殺現場に赴き、フレディの最期の瞬間を克明に想像する。

震えがくるほどの迫真の記述である。序盤ののんびりとした雰囲気とはうって変わり、北部へ向かうほどにドルフマンの想いは奔流のようにあふれでる。抑えようにも抑えることができないのだ。そこで読者は気づく。この旅そのものがフレディ・タベルナへの鎮魂だということに。

本書は、記憶と存在の問題を、濃密で抑制された詩人らしい表現で著した紀行文学の傑作である。一読をお奨めしたい。

なお、ピノチェト元大統領は療養先のUKで「人道への罪」で訴追されたが、その模様はドルフマン『ピノチェト将軍の信じがたく終わりなき裁判』に詳しい。さらに、アジェンデ元大統領の姪にあたるイサベル・アジェンデは米国で作家として成功しているが、その出世作『精霊たちの家』にもクーデタの模様が描かれている。


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posted by コーヒー at 00:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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世界で最も乾いた土地
Excerpt:  アリエル・ドーフマン著の『世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶
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Tracked: 2009-06-26 00:57